同志社大学人文科学研究所
第21期17研究(2022-24)(代表:王柳蘭)



2023年7月8日 [(対面・オンライン開催)同志社大学 良心館 RY407室 ]
同志社大学人文科学研究所第106回公開講演会
越境者をめぐる<故郷>と<境界>:個の物語から考える
開催日時 2023年7月8日(土)
13:30〜17:00(開場13:00)
対象 学生・一般
プログラム
第1部:個別発表[13:30 ~15:40]
13:30 開会・挨拶・趣旨説明
中山大将(釧路公立大学経済学部 准教授)
「慰霊碑が語ること語らないこと―日ソ戦争が生み出した樺太住民の故郷喪失」
下條尚志(神戸大学国際文化学研究科 准教授)
「小さな歴史」から「大きな歴史」を問い直す―ベトナム多民族混淆社会の一家族から考える20世紀」
王柳蘭(同志社大学グローバル地域文化学部 准教授)
「中国ムスリムの末裔・パンロン人たちの声―雲南・ミャンマー・タイを越えて」
村橋勲(静岡県立大学国際関係学部 助教)
「故郷とアイデンティティを希求する―ウガンダにおける南スーダン人の経験と語り」
第2部:総合討論・コメント[15:50 ~17:00]
司会 王柳蘭(同志社大学グローバル地域文化学部 准教授)
コメンテーター 山田孝子(京都大学名誉教授)
講演会報告
本講演会では、地域と地域、人と人のかかわりについて、境界を越える越境者の視点から展望することで、彼らにとって境界とは何か、彼らにとって故郷とは何かについて、「個をめぐる生の物語」から描き出した。故郷と帰属をめぐる重層性の課題を追究し、ある特定の地域との関わりのなかで、越境者が〈何をしたか〉といった出来事とその因果関係にのみ関心をもつのではなく、人びとが自己をめぐるさまざまな他者との関係性のなかで、〈如何に生きたか〉に軸足をおき、その「生」の営みを多角的に明らかにする方向性へと扉を開く。人類学者と歴史学者がそれぞれのフィールドで対話した越境者の語りを通して、為政者や国家による「大きな物語」の脱中心化を促し、国民国家においていまなお、新たな「生」の余白と対話の場を生成しつづける越境者の実践を異なる地域の事例を交差させながら活発な議論を行った。最後に山田孝子氏より越境者における自己の再定置とは何かという問いが出され、変動する地域や国家の境界線上に生きる上で人々に求められる生き方とは何かという普遍的なテーマについても考える機会となった。