同志社大学人文科学研究所
第21期17研究(2022-24)(代表:王柳蘭)
山田 孝子 Takako Yamada
トロント在住カム地方出身チベット人の結婚式。カム地方の伝統的な装いに身を包んでの参加(2013年9月、トロント)
在日チベット人の「つながり」。食べ物を持ち寄って集う新宿御苑での花見(2017年4月)。
ディシプリン 人類学、比較文化学
研究対象地域 沖縄から始まり、東アフリカ、ミックロネシア、アイヌ、ラダック、チベット、シベリアと、各地でフィールド調査を実施し、比較文化学的、通時的・ミクロヒストリーの視点から研究。なかでも、ラダック、チベット難民、DRコンゴのニィンドウを対象とする。
研究テーマ
40年余のフィールド調査経験から、「伝統文化の連続性」、「コミュニティの維持」に関心をもってきた。現在は、難民社会での伝統文化復興、コミュニティの再建や共同性の再構築の問題、あるいは過疎社会などの辺境コミュニティの再活性化と維持の問題をテーマに研究を進めている。とくに、多様なミクロ・リージヨナル文化が尊重され、つながり合い・共生できるコミュニティの在り方をテーマに、フィールド調査資料などの再検討を進めている。
ボーダー(境界)について一言
「ボーダー(境界)」は、何らかの枠を超えること、あるいは他者との接触によって、違いが社会化され、初めて意識されるもので、いろいろな枠組みがあり得るが、ミニマムな地縁的つながりのあるコミュニティ(共同体)の境を超えることによって初めて集団としての境界(ボーダー)が意識されてきたといえ、「ボーダー」の意識はアイデンティティと深く関わりなくなるものではない。多民族、多文化の共存が当たり前となり、異なる他者との接触が日常化するなかで、民族性、国民意識といった「ボーダー」はますます顕在化する。しかし、多民族が共存・共生できる社会の実現はボーダーをなくすことではなく、むしろ維持しながらの実現であるべきと考える。人類学フィールド調査事例を手がかりに、「ボーダー」意識を前提とした多民族共存・共生社会の在り方を探っていく。